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世界陸上2025で日本女子競歩史上初の銅メダルを獲得した藤井菜々子選手。
その快挙の裏には、高校時代から支え続けた恩師・川越学氏との深い絆がありました。
北九州市立高校で競歩に出会い、数々の困難を乗り越えて日本新記録を樹立するまでの軌跡を、データとエピソードを交えて紐解きます。
藤井菜々子と川越学の出会いと師弟関係
藤井菜々子選手は、北九州市立高校で競歩に転向し、全国大会で結果を残すことで競技人生の基盤を築きました。
川越学氏との本格的な師弟関係は、高校卒業後にエディオン女子陸上部へ加入してから始まります。
この章では、高校時代の成長過程と、社会人期に始まった川越氏の指導内容を整理し、二人の関係がどのように形成されたのかを具体的に紹介します。
高校での競歩転向と才能の開花
出典元：X
藤井選手は中学時代まで中長距離走を専門としていましたが、高校入学後に競歩へ転向しました。
1年時から基礎的な歩型の習得に取り組み、週5〜6日の練習でフォームの安定化と持久力強化を進めました。
転向から1年足らずで県大会を制し、全国高等学校総合体育大会（インターハイ）への出場権を獲得しています。
高校2年時には5000m競歩で全国上位に入り、全国レベルで通用する実力を示しました。
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川越学氏の指導スタイルと哲学
川越学氏は、早稲田大学競走部で箱根駅伝に4年連続出場し、卒業後は実業団監督として多くのトップ選手を育成した経験を持ちます。
藤井選手への指導は2021年から始まり、フォーム効率化のための動画解析や、1kmごとのラップタイム計測による即時フィードバックを徹底しました。
また、国際大会を想定したペース配分や暑熱対策、高地合宿での持久力強化など、具体的なトレーニング計画を策定。
競技力だけでなく、食事管理や試合前のルーティン作りなど生活面の指導も行い、総合的なパフォーマンス向上を図りました。
高校時代のエピソードとインターハイ連覇
藤井選手は高校2年・3年時にインターハイ女子5000m競歩で連覇を達成しました。
特に3年時の決勝では、序盤から先頭集団を引っ張り、ラスト1000mでスパートをかけて独走状態を作り出しました。
このレースで記録したタイムは、日本高校歴代記録に迫るもので、全国の競歩関係者から注目を集めました。
高校時代の成功体験は、その後の国際大会での自信と戦術構築の土台となっています。
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競技人生の転機と成長の軌跡
藤井菜々子選手は、高校卒業後にエディオン女子陸上部へ入社し、国内外の舞台で経験を積みながら競歩選手として大きく成長しました。
東京五輪での悔しさを糧に、世界陸上でのメダル獲得へとつなげた歩みには、恩師・川越学氏の存在が欠かせません。
この章では、実業団入りから国際舞台での飛躍、挫折と再起、そして恩師の死去を経て固めた決意までを具体的に振り返ります。
エディオン入社後の挑戦と国際舞台への飛躍
2018年春、藤井選手は北九州市立高校を卒業し、エディオン女子陸上部に加入しました。
入社直後から川越学監督の下で本格的な競歩トレーニングを開始し、フォーム改善や持久力強化に取り組みました。
2019年の世界選手権（ドーハ）では20km競歩で7位入賞を果たし、初の国際大会で世界トップレベルと渡り合える実力を示しました。
この経験が、以降の国際大会での戦い方やペース配分の基礎となりました。
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東京五輪から世界陸上へ、苦悩と再起
2021年の東京五輪では20km競歩に出場し、13位という結果に終わりました。
地元開催でのメダル獲得を目指していた藤井選手にとって、この順位は大きな悔しさとなりました。
翌2022年の世界選手権（オレゴン）では6位入賞と順位を上げたものの、表彰台には届きませんでした。
この間、練習では高地合宿やレース終盤のスパート強化など、課題克服に向けた具体的な取り組みを継続しました。
川越氏の死去と藤井選手の決意
出典元：月刊陸上競技
2025年8月22日、長年指導を受けてきた川越学氏が脳卒中のため63歳で急逝しました。
藤井選手は世界陸上東京大会の直前にこの訃報を受け、左肩に喪章をつけてレースに臨みました。
出典元：日刊スポーツ
大会では序盤から先頭集団に食らいつき、残り3kmで2度の警告を受けながらもペースを維持。
最後は4位の選手と同タイムの接戦を制し、1時間26分18秒の日本新記録で銅メダルを獲得しました。
レース後には「必ずメダルを獲ると決めて練習してきた」と語り、恩師への感謝と今後の金メダル獲得への意欲を示しました。
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世界陸上2025での快挙と日本新記録
2025年9月20日、東京で開催された世界陸上女子20km競歩で、藤井菜々子選手が日本女子史上初となる銅メダルを獲得しました。
記録は1時間26分18秒で、自身が持っていた日本記録を更新。
このレースは、終盤まで順位が入れ替わる緊迫した展開となり、わずか50センチ差での表彰台という劇的な結末を迎えました。
本章では、その詳細なレース展開、メダル獲得の意義、そして記録の価値について掘り下げます。
レース展開と同タイムの激戦
藤井選手はスタート直後から先頭集団に加わり、10km地点を通過した時点で上位争いを維持していました。
15km過ぎに単独3位に浮上しましたが、終盤に歩形違反で2度の警告を受け、あと1回で2分間のペナルティという危険な状況に追い込まれます。
残り1kmでは、4位のパウラミレナ・トレス選手（エクアドル）が9秒差まで迫り、国立競技場内でのラストスパート勝負に突入。
同タイムの1時間26分18秒でフィニッシュしましたが、わずか50センチ差で藤井選手が先着し、銅メダルを手にしました。
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銅メダル獲得の意義と競歩界への影響
この銅メダルは、日本女子競歩が世界陸上およびオリンピックを通じて初めて獲得したメダルです。
男子競歩はこれまで複数のメダル獲得実績がありましたが、女子は長らく表彰台に届いていませんでした。
藤井選手の成果は、女子競歩の競技力向上を示すだけでなく、若手選手の競歩競技への関心を高める契機となりました。
また、国内の競歩強化プログラムや、育成環境の改善にもつながる可能性が高く、日本陸上界全体にとっても重要な一歩です。
1時間26分18秒の日本新記録の価値
今回の記録は、藤井選手が2025年2月の日本選手権で樹立した1時間26分33秒を15秒更新する日本新記録です。
世界陸上の大舞台で記録を更新することは、単なる自己ベスト更新以上の意味を持ちます。
気温や湿度、レース展開などの条件が必ずしも記録向きではない中での達成であり、国際大会での安定したパフォーマンス能力を証明しました。
このタイムは世界歴代でも上位に位置し、今後のメダル争いにおいても十分通用する水準です。
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藤井菜々子の今後と競歩界へのメッセージ
世界陸上2025で、日本女子競歩史上初の銅メダルを獲得した藤井菜々子選手は、レース直後から次なる目標を明確に語っています。
その発言は、単なる個人の抱負にとどまらず、競歩界全体への刺激となっています。
本章では、藤井選手の「金メダル宣言」、若手選手への影響、そして恩師・川越学氏の教えを受け継ぐ姿勢について具体的に紹介します。
次なる目標と語られる「金メダル宣言」
藤井選手は銅メダル獲得後のインタビューで、「本気でメダルを取りにきました。その通りになって感激です。次は金メダルを目指したい」と明言しました。
この発言は、2025年2月の日本選手権で日本新記録（1時間26分33秒）を樹立した際に「25分台でいけばメダルを狙える」と語っていた目標の延長線上にあります。
今後は、国際大会での勝負強さを高めるため、終盤のスパート力強化や警告回避のためのフォーム安定化など、具体的な課題に取り組む方針です。
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若手選手への影響と競歩の未来
藤井選手の快挙は、国内の女子競歩選手にとって大きな励みとなっています。
これまで男子競歩は複数のメダル獲得実績がありましたが、女子は世界大会で表彰台に立つことができませんでした。
今回の銅メダルは、若手選手が「自分も世界で戦える」という自信を持つきっかけになっています。
日本陸上競技連盟も、ジュニア世代への競歩普及や強化合宿の拡充を検討しており、藤井選手の存在が競歩界全体の底上げにつながる可能性があります。
川越学氏の教えを継ぐ者として
藤井選手は、高校卒業後にエディオン女子陸上部で川越学氏の指導を受け、フォーム改善や戦術面の強化を徹底してきました。
川越氏は2025年8月に急逝しましたが、藤井選手は世界陸上のレースで左肩に喪章をつけて出場し、「必ずメダルを獲る」との思いを胸に走り切りました。
川越氏の「選手の自立を促す」という指導哲学は、藤井選手の競技姿勢に深く根付いており、今後は自身がその教えを体現し、後進の育成にも関わっていく意向を示しています。
いかがでしたでしょうか？
藤井菜々子選手の挑戦は、恩師・川越学氏の教えと共にこれからも続きます。
彼女の歩みは、日本競歩界の未来を切り拓く大きな原動力となるでしょう。